環境や健康への意識が高まりつつある近年、自然塗料が注目を集めるようになりました。自然塗料は、自然由来の原料を主成分とする塗料で、木材の質感や機能性を損ねない点が大きな特徴です。
人や環境への負担に配慮したい方のなかには、外壁や屋根の塗装に自然塗料の使用を検討している方がいるかもしれません。そもそも、自然塗料は外壁や屋根の塗装に適しているのでしょうか。
この記事では、自然塗料の特徴やメリット・デメリット、種類について詳しく解説します。塗料の選択に迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
自然塗料は、一般的な塗料と何が違うのでしょうか。
まずは、自然塗料の基本的な知識を身につけていきましょう。
自然塗料は、植物性オイルや天然樹脂などの自然由来の原料を主成分とする塗料です。化学合成された原料をほとんど使用しておらず、木材本来の性質を活かしながら保護することに特化しています。
自然塗料の最大の特徴は、木材の呼吸を妨げないことです。湿度調整機能を維持しやすいので、木材の寿命を延ばす効果が期待できます。また、有害物質の放出が少なく、環境や人体への負荷が低い点も大きな特徴といえるでしょう。
自然塗料と化学系塗料の違いは、表のとおりです。
特性 | 自然塗料 | 化学系塗料 |
主原料 | 植物オイル、天然樹脂などの自然素材 | 石油を原料とする樹脂、溶剤、合成顔料 |
耐候性 | 低い | 高い |
価格 | 高い | 低い |
施工時間 | 長い (乾燥に時間がかかる) | 短い |
仕上がり | 木目を活かした自然な風合い | 人工的な仕上がり |
メンテナンス頻度 | こまめなメンテナンスが必要 | 比較的メンテナンス頻度が低い |
適用範囲 | 主に室内用の家具や木部の塗装 | 幅広い用途に適用可能 |
自然塗料と化学系塗料の最大の違いは「原料」です。化学系塗料が石油由来の合成樹脂を主成分とするのに対して、自然塗料は植物油や天然樹脂を中心に構成されています。
この違いは、塗装後の仕上がりや耐久性、環境負荷に大きく影響します。
化学系塗料は高い耐久性と防水性を誇りますが、有害物質の放出や廃棄するときの環境負荷は高くなることが一般的です。一方で、自然塗料は環境負荷が低く、木材の風合いを活かした仕上がりに強みを持ちますが、耐久性は化学系塗料に劣ります。
自然塗料の最大のメリットは、木材本来の機能を損なうことなく、その特性を活かせる点です。木の呼吸を妨げないため、湿度調整機能が維持され、室内環境を快適に保ちやすくなります。
また、環境負荷が低く、安全性に配慮された製品が多い点もメリットです。化学物質過敏症の方や小さなお子様のいるご家庭にとって、ひとつの選択肢になるでしょう。
時間とともに味わいが増すのも、自然塗料の魅力です。木材の色合いや質感が徐々に変化するので、独特の風合いを楽しめます。この経年変化を堪能できるのは、自然塗料ならではの特徴といえるでしょう。
自然塗料の最大のデメリットは、耐久性の低さです。化学系塗料に比べると耐久性が劣るので、こまめにメンテナンスをしなければいけません。紫外線や雨風にさらされる環境では早期劣化のおそれがあるため、なかには外壁や屋根の塗装に向いていない製品もあります。
また、化学系塗料より高価格な点、乾燥に時間がかかり施工期間も長くなる可能性がある点にも注意が必要です。デメリットを理解したうえで、使用目的や環境に自然塗料が適しているのかを判断しなければいけません。
自然塗料は、大きく以下の3つの種類に分類できます。
ここでは、各種類の特徴をみていきましょう。
オイル系の自然塗料は、亜麻仁油やヒマワリ油などの植物油が主成分です。木材への浸透性が高く、木目を美しく引き立ててくれます。
木の呼吸を妨げにくいので、木の質感や風合いを最大限に活かしたいときにおすすめです。比較的メンテナンスが容易で、部分的な補修もしやすい傾向にあります。
ただし、乾燥に時間がかかり、耐水性や耐摩耗性で他の種類に比べてやや劣る点に注意が必要です。
ワックス系の自然塗料は、蜜蝋やカルナバワックスなどの天然ワックスが主成分です。表面に薄い膜を形成して木材を保護すると同時に、美しい艶を与える効果があります。
ワックス系の特徴は、撥水性と独特の光沢感です。また、静電気の発生を抑えられるため、ほこりがつきにくいという利点もあります。
ただし、耐熱性や耐摩耗性には限界があるので、頻繁に人の手が触れる場所や熱源の近くでの使用には注意が必要です。
オイルワックス系の自然塗料は、オイル系とワックス系の特性を併せ持っています。木材への浸透性と表面保護性を両立している点が特徴です。
オイルの浸透性による木目の強調と、ワックスによる表面保護・艶出しの両方の効果を求めている方におすすめです。
耐久性や耐水性のバランスが取れていて、いろいろな用途に適しています。ただし、他の2種類に比べると価格が高く、乾燥時間も長めになる点に注意が必要です。
自然塗料を使用するときは、以下のようなポイントに留意しなければいけません。
各項目の詳細を説明します。
自然塗料は化学系塗料に比べて環境負荷が低いとされていますが、完全にホルムアルデヒドが発生しないわけではありません。植物由来の原料でも、微量のホルムアルデヒドが発生する可能性があります。
特に、塗装直後は注意が必要です。よく換気するのはもちろんのこと、製品の安全性データを確認したうえで塗料を選定することが重要です。「JIS規格」や「F☆☆☆☆」等の認証を受けた製品を選ぶと、安全に自然塗料を使用できます。
「自然」という言葉から「完全に安全だ」と誤解されがちですが、自然塗料も安全性に注意しながら使用する必要があります。
天然由来の成分でも、アレルギー反応を引き起こす可能性はあります。また、防カビ剤や防腐剤として化学物質が添加されている製品は少なくありません。
「自然素材=すべての人が安心して使える」というわけではないので、使用前は必ず成分表を確認して、自身の体質や使用環境に適しているかを慎重に判断しましょう。
自然塗料は、室内での利用に適しています。人が長時間過ごす場所、例えば居間や寝室、子供部屋などでの使用がおすすめです。
自然塗料の湿度調整機能は、結露の防止や空気質の改善に効果を発揮してくれます。化学物質の放出量も比較的少ないため、シックハウス症候群のリスクを軽減できる点も、室内利用のメリットとして挙げられます。
室内の壁や天井、家具などに使用することで、木材本来の質感を活かしながら、健康的で快適な空間を作り出しやすくなるでしょう。
自然塗料は、環境や健康に配慮したい方にとってひとつの選択肢になります。木材本来の魅力を引き出し、時間とともに味わいが増していく自然塗料をぜひ活用してみてください。
ただし、自然塗料には耐久性や価格面での課題もあり、外壁塗装や屋根塗装に適さない場合があります。製品ごとの特性をよく理解したうえで、適切な用途で活用することを心がけましょう。
外壁塗装や屋根塗装、塗料について疑問をお持ちの方は、ぜひ神奈川県川崎市で創業70年の信頼と実績を誇る野村塗装店までご相談ください。各住宅の特性やご希望をふまえ、最適な塗料や工事を提案いたします。