近年、塗装に「無機塗料」をおすすめする業者が増加しています。実際に、塗装の見積もりを依頼した際に、無機塗料にするかを聞かれた方も多いかと思います。

「耐候性が高い」「メンテナンスが楽」など、利点が豊富だとアピールされる無機塗料。ところが知識がない方にとっては、通常の塗料との違いがわかりにくいですよね。

そこで今回は、無機塗料の特徴やほかの塗料との違いについてお伝えしていきます。塗料でお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

そもそも無機塗料って？

あなたは理科の授業などで、「無機物」や「有機物」という言葉を耳にしたことはありますか？無機物とは炭素を含まない「生命が作れないもの」で、有機物は炭素を含む「生命が作れるもの」のことを指します。

イメージしにくいかと思いますが、ガラスや陶器、石やレンガは無機物、樹脂（生命）から生み出されるアクリルは有機物です。

有機物は太陽光で劣化する性質がありますが、無機物は太陽光では劣化せず、半永久的な耐久性を持っている点が特徴です。たとえばガラスや石は、どんなに太陽光をに当てても割れたり縮んだりしませんよね。それと同様に無機塗料は紫外線に強く、有機塗料よりも長く塗膜をキープできるのです。

ただし、完全に無機物だけを配合した塗料はかたすぎて使い勝手が悪いため、有機物を混ぜて使いやすくしたものを一般的に無機塗料と定めています。要するに、どちらの塗料も主材料は有機物で、無機物とのハイブリッドのものを「無機塗料」と定めているのです。

無機物のみの塗料ではないため、無機塗料も当然劣化します。永久的に塗膜が持続する塗料は存在しないため、「メンテナンスが不要」などの言葉に惑わされないように気をつけてくださいね。

無機塗料のメリット・デメリット

特徴だけを聞くと「無機塗料の方がいいのでは？」と思われるかもしれませんが、無機塗料にはデメリットも存在します。

実ここでは、無機塗料のメリット・デメリットについて解説します。

無機塗料のメリット

無機塗料のメリットは、以下の3つです。

• 耐久年数は約20年以上
• セルフクリーニング機能があり、カビや苔が生えにくい
• 不燃性に優れている

耐久性が高い

無機塗料の大きな特徴は、やはり耐久性の高さ。有機塗料の場合は耐久性が10年程度となります。したがって、その倍の期間持つ無機塗料を用いれば、メンテナンスの手間や費用が省けるという利点があります。塗膜が劣化しにくいため、変色のリスクも低いです。

セルフクリーニング機能がある

無機塗料は親水性が高くて汚れを浮き上がらせる作用があるため、雨水で付着した汚れを洗い流せるのも大きなメリット。カビや苔の発生が抑制され、長期間きれいな外壁をキープできますよ。

不燃性に優れている

無機物は燃えない特性があるため、無機塗料は火事になっても燃えにくいです。100％燃えないということはないですが、有機塗料と比べると炎の燃え広がるスピードが抑えられて安全だと言えるでしょう。

無機塗料のデメリット

無機塗料のデメリットは、以下の3つです。

• ひび割れのリスクがあり、相性が悪い素材がある
• つや消しができない
• 質の良い塗料・技術力のある職人が必要

ひび割れのリスク・相性が悪い素材がある

無機塗料は有機塗料と比べると塗膜がかたくなるため、外壁表面にヒビが入ると塗膜も一緒に割れてしまうケースが多いです。そのため、ひび割れしやすい外壁の場合は、弾性力が高い塗料を選ぶ必要があります。

同じ理由で、収縮性のある木材などと無機塗料は相性が悪いです。このように無機塗料を使うときは、外壁材や屋根材との相性を考慮する必要があるのです。

つや消しができない

今のところ、完全につやを消せる無機塗料は出ていません。5分つやまでの調整は可能ですが、つや消しをすると無機塗料の耐久性やセルフクリーニング機能が落ちてしまいます。ゆえに、つやの調整はあまりおすすめできないのです。

つや消しのデザインが好きな方には、無機塗料は向いていないと言えるでしょう。

質の良い塗料・技術力のある職人が必要

無機塗料には、今のところはっきりとした定義がありません。有機塗料にほんの少し無機物を入れただけでも無機塗料と言えるため、「有機塗料よりも価格が高いのに全く効果が実感できなかった」なんてトラブルに発展する可能性もあります。

質のいい無機塗料の場合でも、均一にムラなく塗れなければ無機塗料のメリットを引き出すことは不可能です。無機塗料を用いるときは、信頼できて技術力の高い業者を選ぶことが大切です。

メリット・デメリットを知った上で無機塗料を活用しよう

無機塗料は耐久性が高く、セルフクリーニング性能があるためメンテナンスの手間が省けるというメリットがあります。その一方で、費用が高くひび割れに弱かったり、素材との相性を考慮する必要があったりとデメリットも存在しています。

また、塗料の質や職人の腕に効果は大きく左右されるため、無機塗料での塗装を依頼する業者選びは慎重に行う必要がある点に注意しましょう。

無機塗料の耐久性がいくら高いといえども、20年間塗りたてのきれいな外壁をキープすることは困難なことです。メリットとデメリットをよく検討し、本当に無機塗料が必要かどうかを見極めるようにしてくださいね。