屋根塗装をする際、作業工程確認のときに縁切りという言葉を聞くことがあるかもしれません。縁切りは一般の方にとっては聞き慣れない言葉ですが、雨漏り防止や屋根の健康を維持するためには欠かせない作業になっています。
今回は、縁切りについてお伝えします。
縁切りは、塗料で接着してしまった屋根に切れ目を入れて、排水経路を作る作業のことです。主にスレート屋根(カラーベストやコロニアル)の塗替えの際に行われる作業です。
屋根は何枚もの屋根材を重ねてひとつの屋根を作り上げています。屋根材が重なっている部分には本来隙間があるものですが、塗装のときに塗料が垂れて接着してしまうことが多いです。
接着して隙間が埋まってしまうと、雨などで内側に蓄積された水分の排出経路がなくなります。また、物質の内側と外側の気温差が生じたときに、結露が起こることがあります。
屋根にある隙間は、この屋根に入り込んでしまった雨水を外に排出するという大切な役目を果たしているのです。縁切りで排水経路を作らないと、水分で屋根材の下にある野路板が傷みやすくなったり雨漏りの原因になったりしてしまいます。
縁切りは雨水や結露を排出する経路を作る、屋根の健康を維持に欠かせない作業なのです。
塗料を塗ったばかりのときに縁切りをしても、塗料が垂れて再び屋根が接着してしまう危険性があります。そのため、縁切りの作業は完全に塗料が乾いてから行うのが一般的です。
縁切りをするときは、カッターや専用のアイテムを使って職人の手で屋根に排水経路を作っていきます。屋根の大きさにもよりますが、一戸建で1日中かかってしまうこともある手間と時間のかかる作業です。
縁切りをすると、屋根の見た目が悪くなってしまうところが大きなデメリットです。せっかく美しく仕上がった屋根にカッターを入れるため、小口部分が破損してしまうことがあります。
また、職人が屋根の上を移動することになるので、足跡がついてしまったり屋根材を傷つけてしまう可能性もあります。
作業に手間がかかるので、工賃が高くなりがちなところもデメリットとして挙げられるでしょう。2人の職人が行っても1日かかる縁切り作業は、5万円前後もの料金がかかってしまうこともあります。
従来の時間のかかる縁切り作業をサポートしてくれるのが、タスペーサーというアイテム。株式会社セイムが製造・販売しているもので、スレート瓦の重ね目に差し込んで隙間を作ることにより、屋根が接着してしまうことを防いでくれます。
縁切りは塗装が完全に乾いてから行われる作業ですが、タスペーサーは使うタイミングが違います。タスペーサーは下地調整、下塗りが済んだ段階で取り付け、取り付けたまま上塗りをするところが特徴的です。
タスペーサーの耐荷重は60~80kgで、職人が足で踏んでも破損することはありません。
らかじめタスペーサーを入れておくことで完成後に屋根を歩き回る必要がなくなり、効率もぐっとアップするのです。作業時間は職人2人で2~3時間、費用も4万円程度と時間もコストも節約してくれます。
便利なタスペーサーですが、屋根によっては使えないこともあります。以下の屋根の場合は、タスペーサーが使えません。
とくに、2006年9月付近に作られたスレート屋根を使っている場合は要注意です。2006年9月からスレート屋根にアスベストを使用することが禁じられたのですが、無石綿スレート屋根の初期製品のなかには脆弱な製品があることがわかっています。タスペーサーの使用でヒビが入って割れてしまう危険性があるため、取り付けができません。
タスペーサが使用可能な屋根なのかどうか、現地調査の段階でしっかりとチェックしておきましょう。
縁切りが行われるのは、主にスレート屋根です。そのため、ほかの屋根材屋を使用している場合や屋根の状況によっては、縁切りをする必要がありません。
以下の場合は、縁切りやタスペーサーは不要です。
縁切りやタスペーサーは必ず行うべきものではないため、業者と相談しながら必要かどうかを見極めてくださいね。
縁切りは、塗料で接着してしまった屋根に排水経路を作る工程のことです。
スレート屋根には欠かせない縁切りですが、屋根材や屋根の状態によっては不要なこともあります。見積もりの際は縁切りやタスペーサーのが必要かどうかを確認し、適切な屋根塗装をしてもらうようにしましょう。