外壁塗装に使う塗料にはさまざまな種類がありますが、なかでもゴムのように伸び縮みする特徴を持ったものを「弾性塗料」と呼びます。伸び縮みする塗料と聞くと、何となく「外壁によさそう」「耐久性が高そう」とイメージする人も多いかもしれませんが、じつは施工するときは注意が必要です。
今回は、塗料の一種である弾性塗料について深掘りします。ご自宅に最適な塗料選びのヒントとして、ぜひ役立ててみてくださいね。
外壁塗装に使う弾性塗料とは、その名の通りゴムのように弾力性を持った塗料のことです。弾性塗料の施工には専門知識が必要で、一般の人がDIYで取り扱うことは難しいとされています。
まずは、そんな弾性塗料について詳しく知るために、メリットとデメリットについて見ていきましょう。
弾性塗料を使用することには、3つの大きなメリットがあります。それぞれについて、簡単に説明します。
弾性塗料はゴムのように伸び縮みするため、塗膜のひび割れが起きにくい傾向にあります。硬い塗料を使ってしまうと、車や地震といった振動があった際に外壁がダメージを負って、塗膜がひび割れたり剥がれたりしてしまいます。一方で、柔軟性が高い弾性塗料であれば、衝撃による塗膜の劣化を防げるのです。
塗膜のひび割れは、放っておくと浸水や外壁材の劣化を引き起こしてしまいます。そのため、ひび割れしにくくて外壁を保護する効果が高い弾性塗料は、非常に魅力的な塗料なのです。
弾性塗料はその伸縮性のある性質から、外壁材にピタッと密着してくれます。塗料がしっかりと外壁に密着してくれれば、雨水の侵入を防げます。
さらに、弾性塗料は厚めに塗膜を形成することが多いです。そのため、ほかの塗料よりも防水性を高めることができるのです。
モルタル壁は、外壁材のなかでもひび割れが起きやすいという特徴を持っています。モルタル壁の場合、一般的に耐久性が高いといわれている「フッ素塗料」であっても、ひび割れが起きてしまうことは多々あります。
ところが、弾力性に富んでいてひび割れしにくい弾性塗料であれば、万が一モルタル壁にひびが入っても塗膜がしっかりと外壁材を守ってくれるのです。そのため、モルタル壁に塗布するなら弾性塗料が最適だといわれています。
弾性塗料には、メリットだけではなくデメリットもあります。メリットとデメリットの双方を理解し、使用するかどうかを判断することが大切です。
具体的なデメリットは、以下の2点です。
弾性塗料は通気性が低いため、内側の空気が塗膜を膨らませてしまう恐れがあります。近年は通気性が高い弾性塗料も販売されているため、そういったものを使用することをおすすめします。膨らまないように施工するためには職人の熟練の技術が必要なので、DIYで施工することは避けましょう。
弾性塗料は、ほかの塗料と比べると耐用年数が短めであるというデメリットがあります。一般的な塗料は10~15年前後、フッ素塗料や無機塗料は20年ほど塗膜がもちます。しかし、弾性塗料は8~10年程度が耐用年数の目安です。メンテナンスの手間を増やしてまで弾性塗料を選ぶべきかどうか、しっかりと業者と相談することが大切です。
先述したように、弾性塗料が向いているのは割れやすい性質を持ったモルタル外壁です。外壁材が割れても塗膜がしっかりと保護してくれるため、素材の劣化を防げます。
反対に、窯業系サイディングに施工に塗るときは注意が必要です。窯業系サイディングは蓄熱性が高く、その熱が塗膜をやわらかくして膨れや剥がれの原因となってしまうためです。窯業系サイディングに施工するときは、専門知識を持った職人によるボードの状況の確認や、念入りな下地処理などが必要となります。
最後に、弾性塗料の仕上げ方3種類とそれぞれの費用について紹介します。
単層弾性仕上げとは、下地を塗布したあとに単層弾性工法用の塗料を2回塗布し、厚みをもたせる仕上げ方です。1平米あたり1,100~1,500円程度と費用が安く、簡単に施工できますが、耐用年数が5年程度しかないというデメリットがあります。
複層弾性仕上げとは、下地を塗布したあとに高弾性塗料を2回塗布し、仕上げ塗料を2回塗る工法です。1平米あたり1,500~2,000円程度の費用がかかりますが、耐用年数が10年以上となるメリットがあります。
微弾性塗料仕上げとは、微弾性フィラーと呼ばれる下地を塗り、上塗り用の塗料を2回塗る工法です。微弾性フィラー自体に弾性があるため、上塗りの際に弾性塗料以外の塗料を塗ることが可能です。
時間の経過とともに弾性は失われますが、上塗り塗料の塗膜が劣化しない限りは外壁材を保護できます。そのため、単層断層工法よりもメンテナンスの手間が少なくて済むのです。なお、1平米あたり1,200~2,000円程度の費用がかかります。
ゴムのように伸び縮みして外壁を保護してくれる弾性塗料。ひび割れしやすいモルタル壁との相性が非常にいい塗料で、高い防水性で外壁をしっかりと保護してくれます。
弾性塗料にはメリットもありますが、反対に膨らみやすかったり耐用年数が短めであったりと、デメリットも存在しています。双方をよく比較し、導入するメリットがあるかどうかをしっかりと検討していきましょう。